第八話:夏至の夜・前編
アンジェリーンから衝撃の秘密を打ち明けられてから、インドラは毎日毎日思い悩んでいた。
伯爵家を救うために、犠牲となる運命を背負わされたアンジェリーン。
緑豊かな森林に囲まれた白いエルド城も、青くて広い空も、銀砂のような煌く星空も、全てが灰色に見えているという。
そして、短い間でも、自分と一緒に居たいと言ってくれた。
今のインドラの心の殆どは、アンジェリーンへの想いでいっぱいだった。何とかして彼の運命を変えてあげたい。犠牲などと悲しいことにならないように、魔女に嘆願できれば。
メイズリーク伯爵家を救ってくれた魔女に対し、等価を支払うのは当たり前のことだ。でも、それでアンジェリーンの一生を犠牲にして良いわけがない。
普段通り、毎日レッスンや勉強は続いている。インドラが正式に伯爵家の養女となったことで、身につけなければならないことや、覚えることなどがどんどん増えていく。それらのことに真剣に取り組みながらも、インドラは必死に考えた。アンジェリーンを救う方法を。
でも、容易に答えが見つかるわけでもなく、焦りばかりが募るだけだった。