第六話:ティーパーティー
「お嬢様、お嬢様、良い報せですよ!」
常に冷静で、はしゃぐことがないパヴリーナが、喜びと驚きを混ぜたような表情で、慌てた様子で部屋の中に飛び込んできた。
「どうなさったのですか、先生?」
クローデットにドレスを着せてもらっていたインドラは、不思議そうに首をかしげてみせた。まだ行儀作法を習う朝食までには時間がある。
「今日の午後、伯爵がティーパーティーにお招きくださるそうです」
嬉しそうにパヴリーナが言うと、クローデットがにこやかにインドラの片手を握った。
「それはようございましたね、お嬢様」
しかしインドラは硬直したまま、ぽかんと口を開けてパヴリーナを見ていた。
伯爵と初めての対面は、緊張したインドラが上手に挨拶できずに終わっている。直後はたくさん泣いて落ち込んでいたインドラだったが、翌日からは普段通り元気に意欲的に勉強に励んでいた。それから1週間経った今日、突然伯爵自らパヴリーナを呼び、午後の ティーパーティーに招待する旨を伝えたのだ。
アンジェリーンが言ったように、伯爵はインドラを城から追い出す気はなかったようで、インドラはどこかホッとしたようにその場に崩れ落ちてしまった。
「まあまあ」
クローデットは慌ててインドラを支えながら立ち上がらせ、近くの鏡台前の椅子に座らせた。
「腰が抜けるほど、驚かれたんですね」
くすくすと笑い、ドレスを整えてやった。
「伯爵様が……お招きくださったのね、わたしを」
恐る恐るといったふうに、パヴリーナに顔を向ける。
「はい。おめかしして行きましょうね」
パヴリーナはそう言い、優しく微笑んだ。