【小説】片翼の召喚士-episode093

chapter-4.記憶の残滓編
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記憶の残滓編-episode093 【片翼の召喚士】

 夕食を知らせる鐘が鳴り、少女は部屋を出た。

 出される食事は、最低限飢えを凌げる程度しかない。育ち盛りの孤児たちにとっては、物足りないくらいだ。動いていなくてもお腹はすいてしまう。

 食堂へ向かおうとしたが、部屋のそばにスープの皿と小さなパンが置かれているのに気づき、少女は昏い視線を落とした。

 食堂へは来るな、ということだ。

 昼間騒ぎ立てられたことを思い出し、少女はすぐ納得する。あんなふうな騒ぎがあったあとは、きまってこうして部屋の外に食事が置かれるのだ。

 少女は無言でその皿とパンを拾うと、部屋に戻り扉を閉めた。そして小さなため息をついてその場に座り込み、冷め切ったスープをすすった。

 夜になると一気に冷え込むので、温かいスープが飲みたかった。でも、こうして食べ物を与えられるだけマシなのだということを、少女は判っている。

 仔犬が労わるように、少女の足に顔を擦り付ける。それがこそばゆくて、少女は目を細めた。

 消灯時間が過ぎた頃、少女はそっと部屋を出て、真っ暗な廊下を危なっかしく歩きながら、火の落ちた台所に入る。流し台にスープ皿を置いて、近くに有る木箱を引っ張ってきてその上に立つと、貯めおけから水を汲んで丁寧に皿を洗った。ちゃんと洗って皿を返しておかないと、今後食事がもらえないのだ。

 夜半にもなるといっきに気温が下がり、水は冷たく、少女はヒリヒリと手に感じる冷たさに息を吐きかけながら洗った。

 皿を拭いて棚に入れ、木箱を元の位置に戻し、少女は台所を後にする。そしてその足で浴場へ向かい、真っ暗な脱衣所で粗末な服を脱いだ。

 子供には大きすぎる鏡の前で、少女は複雑な色を表情に浮かべて、身体を後ろに向けた。

 肩ごしに、鏡に映る自分を見る。

 右側に生えた翼、そして左側には――

 ちぎり取られ、毟られたような、翼のような残骸があった。

 少女は今にも泣き出しそうな目をして、その無残な左側の翼を見つめる。

 毎日こうして鏡の前で、自分の左側の翼を見る。それは、いつか真っ白い、右側と同じ翼が生えてくるのではないか。そう期待するからだった。

 しかし少女の願いを裏切るように、翼にはなんの変化もない。確認するたびにがっかりするだけだった。

 この修道院の子供たちは、いつも口々に言う。

 ――お前は病気持ちなんだ。

 ――感染ったらどうするんだよ。

 ――あっちいけよ。

 ――不細工で目障りだ!

 子供たちの言葉には容赦がなかった。それにもまして、修道女たちの目も、子供達と同じような意味を滲ませて少女を見ていた。

 少女は頭の中に浮かんだそれらの言葉を払拭するように頭を振り、下着も脱ぐと洗い場に入り、冷め切った湯を身体にかけた。