【小説】片翼の召喚士-episode091

chapter-3.混迷の遺跡編
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混迷の遺跡編-episode091 【片翼の召喚士】

 執事代理となったセヴェリに案内された部屋は、キュッリッキの部屋のすぐ隣の2部屋だった。

「お夕食の準備が整いましたら、お呼び致します。時間は19時くらいになります」

「うん、ありがとうセヴェリさん」

「ありがとうございます」

「それでは、ごゆっくり、おくつろぎくださいませ」

 慇懃に挨拶して、セヴェリは戻っていった。

「メルヴィン、付き合わないか」

 ルーファスは手振りで飲む仕草をする。

「是非」

 メルヴィンは笑みを浮かべ、ルーファスの部屋に入った。

 ハーメンリンナにある貴族や富豪たちの有する屋敷と大差なく、とにかくこの屋敷は無駄に広い。そして2人の部屋も無駄に広かった。

 ベルトルドの好みだろうが、屋敷の調度品や色調は、青と白を中心にしたものが多い。下品になるほど派手ではなく、かといって質素になるほど簡素でもなく、ちょうどいい調和が取れている。

 寒々しい印象を与える青色も、絶妙なバランスと濃淡で、柔らかく配色されているので、落ち着いた良い部屋になっていた。

 ソファに向き合って座り、ルーファスはメルヴィンのグラスにワインを注いだ。

「貯蔵庫から拝借してきた」

「いつの間に…」

「ベルトルド様のように転移は無理だけど、サイ《超能力》でちょちょいとネ」

 人懐っこい笑みを浮かべ、ルーファスはワイングラスを持ち上げ乾杯する。それを見やってメルヴィンは苦笑すると、乾杯した。

「お疲れ様です」

「お疲れ~。さっきカーティスに連絡とったら、あっちもみんなクタクタで、すぐ部屋にすっこんだそうだ」

「なんだかんだ、あちらでは雑魚寝状態でしたしね」

「だよネ。それに、じめじめ暑かったし。真夏じゃあるまいし、あの国は大変だなあ」

 笑いながらグラスを傾ける。

「今回の仕事は、キューリちゃんの全面サポートがあって、随分手際よく進められて良かったのに、とんだことになっちゃったよねえ」

「そうですね。まさか遺跡にあんな怪物が出現するなんて、予想もできませんでしたよ」

「うんうん。元々詰めてた研究者たちでも見つけられてなかったし、襲われてなかったわけだしさ。一体どんな仕掛けだったのかなあ」

「ええ」

「娯楽小説だと、床の判りにくいスイッチを踏んじゃって、罠が発動した、なんてシーンがあるけど。そんなノリとはチガウっぽいけどね」

「ですね…」

「あんな大怪我させちゃって、オレたちがどうこうしたわけじゃないけど、なんかキューリちゃんに悪くってさ…」

「はい」

 あれ以来何度も思い出す、キュッリッキの大怪我した姿。何とかして助けたいと思いながらも、助からない、もうだめだと思うほどの惨さだった。

 この事件は、ライオン傭兵団皆の心に、深い後悔となってずっと残ることになる。

「それにしてもさ、キューリちゃんに好かれてるとは思ってなかったから、なんかこそばゆいな」

 ルーファスは座り直して話題を変えた。

「女の子に好かれるのは、悪い気はしませんよ」

「まあね。とにかく美少女だからなあ、キューリちゃん。あれで胸がおっきかったら完璧だったんだけど」

「太りにくい体質だと言ってたことがあるので、あまり言うと可哀想ですよ」

「ははっ、それならしょうがないな」

「しかし、頼りにされてる以上、守ってあげないと」

「ベルトルド様からだろ。淫乱オヤジの毒牙から守るのは、一国の軍隊から守るより至難の業だよねえ」

 どんよりと重たい空気を漂わせながら、2人は俯いた。

「これはもう、アルカネットさんに縋るしかっ」

「どっちもどっちな気がしますが」

「ベルトルド様は有言実行、アルカネットさんは無言実行、どっちもどっちか」

 敵が強すぎて、お姫様を守るナイト役は難しすぎると、闘う前から諦めモードが漂う2人だった。