【小説】片翼の召喚士-episode085

chapter-3.混迷の遺跡編
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 キュッリッキを乗せた担架は、ベルトルドのサイ《超能力》で操作され、振動も揺れもなく静かに浮いて進む。

 担架の傍らで操作するベルトルドに、ケレヴィルの研究者たちが何事かを報告している。その後ろに若干の間を置いて医師2人とライオン傭兵団が続き、ハドリーとファニーが最後尾に続く。

 漁港を目指し、御一行は徒歩で進んでいた。

 ハドリーとファニーは、シ・アティウスから任を解かれていたが、キュッリッキが心配でライオン傭兵団と共にいた。そして彼らの起こした騒動で、アルイールのエグザイル・システムが抑えられ、更にはハワドウレ皇国の正規部隊までもが出動して、アルイールを制圧したという。

 どうやって帰れば、と思案していたところに、カーティスから帰還同行の誘いがあって、ありがたく同行させてもらっている。

「リッキーも無事だし、あたしたちも帰れるし、ホント良かったよね」

「だなあ。安心して帰れる」

 先頭のほうは見えないが、キュッリッキの傍らには副宰相ベルトルドがついている。

 キュッリッキの大怪我を治すために、アルカネットと医師2人を手配してくれたのはベルトルドらしい。そして、エグザイル・システムが安全に使えるように、正規部隊を動かしたのもベルトルドだという。

 召喚スキル〈才能〉という、レアなスキル〈才能〉を持っているとはいえ、キュッリッキは一介の傭兵にしか過ぎない。それなのに、あんな大物が動いてくれた。

「感謝しかないよな、色々と」

 ハドリーの呟きに、ファニーも頷く。

「帰ったら新しい仕事見つけないとっ」

 ファニーは握り拳を作って気合を入れる。

「もう仕事行くのかよ…」

「あったりまえでショ。中年になるまでにいっぱい貯金して、あとは引退して悠々自適生活するって目標、あるんだもんね」

「堅実な人生設計だなあ、相変わらず」

「だってさー、あたしらみたいな平々凡々な戦闘スキル〈才能〉じゃ、大金が転がり込むような仕事は縁遠いじゃない」

「だよなあ」

「有名どころに誘ってもらえることもないし、だったら、小口でもしっかりと働いて、貯金しないとね!」

「んだんだ」

 ファニーの言う通りで、大多数の傭兵たちは、自分たちと同じような環境なのだ。

 ライオン傭兵団のように、後ろ盾もしっかりとしたトップクラスの傭兵団は、稀な方なのである。仕事先で怪我を負ったからといって、ここまでしてくれるところなど、普通はないのだから。

(良いところに入れたな、リッキー。本当に良かった)

 ほっこりとした気持ちでそう思ったところで、一行の進みが止まった。ハドリーは止まりそこねて、ガエルの背中にぶつかってしまった。

「すまん」

 慌てて謝っていると、

「まどろっこしい!」

 と、副宰相が突然前の方で叫びだした。

 何事かと首をかしげていると、突然身体がふわりと宙に浮いた。

「あわわ、なになにこれ!?」

 慌てるファニーに、

「これでラクに漁港まで行けるぜ」

 ニヤリとギャリーが言った。

「オレら、ベルトルド様のサイ《超能力》で浮いてるんだよ。1時間の道程が、ギューンと短縮するよ~」

 そうニッコリと、ルーファスがファニーに笑顔を向けた。

「へ?」

 それと同時に、浮いた姿勢のまま、いきなり前方に加速した。

-つづく-