【小説】片翼の召喚士-episode081

chapter-3.混迷の遺跡編
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混迷の遺跡編-episode081 【片翼の召喚士】

「ボクこんなに働いたの、初めてだよ…」

 ランドンはトントンッと肩を叩きながら、首を左右に動かした。その度に関節がポキポキと鳴る。

 窓からは明るい光が差し込み、今日もいい天気であることを告げていた。

「ちょーすまねえ…」

 頭から足の先まで全身包帯でぐるぐる巻きにされたザカリーが、ベッドの中から心底申し訳なさそうに詫びた。目と口だけ包帯から逃れ、すっかりミイラ男状態だ。

 ヴァルトにしょっ引かれてきたヴィヒトリは、長時間労働の直後に再び縫合を要求され、さすがに嫌そうな表情を露骨に出していたが、ギャリーとガエルのプレッシャーに脅される形で、渋々ザカリーの縫合をおこなってくれた。

「だあああ! 縫うところが多すぎるぞ! 長時間オペ完徹連日で、ボクはチョー疲れているんだ!」

 あまりにも縫合箇所が多すぎてヴィヒトリは発狂し、結局夜中近くまでかかると、今度こそヴィヒトリはぶっ倒れて、宿に担ぎ込まれてしまった。

 さすがの医療スキル〈才能〉のスペシャリストも、連続長時間労働はきつかったらしい。

 ランドンは縫合中ずっと回復魔法をかけ続け、終わったあとも時折様子を見ながら魔法をかけていた。またもや徹夜で魔法を使い続ける羽目になったランドンは、やや面窶れしたようにも見えた。

 助っ人に呼ばれたウリヤスは、縫合はあまり得意じゃないと逃げたが、それは単にヴィヒトリの邪魔をしたくなかったからである。技術に差がありすぎるため、ヴィヒトリのペースを乱さない為の配慮でもあった。

「ザカリー死ななくてよかったよ」

 ベッドに乗っかっていたハーマンは、ザカリーの脇腹に小さな拳を軽く叩き込んだ。

「いでで……勘弁してくれ」

「イアサール・ブロンテなんて大技出してくるんだもん。さすがにアレはビックリしたさー」

「自分から貰いに行くとか、マゾイことをするもんだ…」

 ランドンがため息混じりに言うと、ザカリーは苦笑した。

「なんかよ、罰を受けなきゃいけない気がして。キューリあんな大怪我しただろ、俺だけピンピンしてるのも気が引けるっつーか」

 モゴモゴとザカリーが言い訳すると、ランドンとハーマンは大きく首を横に振った。

「はあ…。それで君が死んだら、キューリは今度は自分のせいだって、自己嫌悪でポックリ逝っちゃうかもしれないんだよ」

「……それは、困る」

「責任感じてるんだったら、あとでちゃんと謝って、キューリさんから罰もらえばいいんじゃない?」

「それがいいかもね」

 ハーマンとランドンから提案されて、ザカリーは神妙に唸った。

「失礼しますよ」

 マルヤーナが部屋に入ってきた。

「ランドンさん、ハーマンさん、すぐにキュッリッキさんの病室に来るようにと、アルカネットさんから言付かってきました。そしてザカリーさんは、おとなしく寝ているようにと」

 3人は顔を見合わせる。

「ありがとうございます」

 ハーマンはマルヤーナに礼を言うと、また後でねと言って、ベッドから飛び降りた。

「話が終わったら、また来るから。ちゃんと寝てるんだよ」

 ランドンも立ち上がった。

 病室を出ていくハーマンとランドンを見送って、ザカリーはゆっくりと目を閉じた。