【小説】片翼の召喚士-episode080

chapter-3.混迷の遺跡編
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混迷の遺跡編-episode080 【片翼の召喚士】

「ぷはー…、めっちゃ怖かった…」

 ハドリーは長い息を吐き出しながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。

「あたしも、一生分の勇気を奮い起こした気がするわ」

 同じようにファニーも座り込んで、ハドリーにもたれかかる。

「お2人共、ありがとうございます」

 ホッとしたような表情を浮かべたカーティスは、2人のほうを向いて頭を下げた。

「いや、本当のことを言っただけなんで」

 ハドリーは苦笑を浮かべて肩をすくめた。キュッリッキのためにしたことだ。

「我々だけでは、止められなかった…」

 まさか、あそこまでアルカネットが激怒するとは思っていなかった。確かにキュッリッキを気に入っている様子ではあったが、本気で好きになっているのだろうか。

 美しい容姿の純粋な少女。レア中のレアである召喚スキル〈才能〉を持っているとは言え、キュッリッキへの入れ込みようには、首をかしげるものがある。

 今回のことは、ザカリーとキュッリッキが喧嘩をして、偶然起こってしまった不幸な事故。当人たちだって、喧嘩をしただけで、こんな事態を引き起こすとは思ってもみなかっただろう。だから、キュッリッキはアルカネットを必死で止めていたのだ。

 この先キュッリッキが、誰かと喧嘩をすることもあろうだろうし、危険な目に遭うかもしれない。怪我だってするかもだ。しかしその都度これでは、仲間たちはたまったものではないし、仲間に馴染もうと必死になっているキュッリッキを、傷つけることにもなってしまう。

 リーダーとしては頭の痛いことだと、そうカーティスは天を仰いだ。

「おいカーティス、宿の医者に縫ってもらっちゃダメか? これはウリヤスさん一人じゃ縫う箇所多すぎてよ」

 肩に担いだザカリーを、ギャリーは指さした。

「急患だからと言えば、縫合してもらえるんじゃないですかねえ。――ヴァルト」

「ぬ?」

 蹲踞していたヴァルトは、呼ばれて顔を上げる。

「宿までひとっ走りして、ヴィヒトリを呼んできてください。ザカリーの縫合を頼みたいので」

「おう、マカセトケ!」

 元気よく跳ねて立ち上がると、ヴァルトは宿を目指して走り出した。そして、ダッシュで戻ってくる。

「なあ、宿どこだ?」

「バカかおめーは!!」

 思わずギャリーがツッコミ怒鳴る。

「初めてきた町だぞ、知ってるほーがオカシーだろ!」

 確かにその通りではある。なら、走り出す前に確認して行けと、そうカーティスはひっそり呟いた。

「オレ知ってますよ、案内します」

 見かねてハドリーが声をかけた。

「おう! 頼むぞヒゲにーちゃん!」

 両腕を広げて喜ぶヴァルトに、ハドリーは薄く笑った。

「なんだかお世話になりっぱなしで、本当にありがとうございます」

「い、いえ」

 カーティスに恐縮気味にお礼を言われ、ハドリーは更に薄く笑った。

 ヴァルトとハドリーが、連れたって宿へ向かう後ろ姿を見送り、カーティスは立ち上がる。

「さて、手の空いてるひとは、この辺を片付けましょう。ハリケーンが襲ってきたような有様で、ご町内に申し訳ないですから」

 カーティスが周囲を手で示すと、病院前から数メートル付近が、ゴミ捨て場のように変わり果てていた。アルカネットがしでかしたとはいえ、自分たちにも原因はあるし、町にしてみたら迷惑をかけられたに過ぎない。

「片付けが終わったら、パブに行って、何か食べてきましょうか」