【小説】片翼の召喚士-episode072

chapter-3.混迷の遺跡編
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混迷の遺跡編-episode072 【片翼の召喚士】

「アルカネット! アルカネット!!」

 裸にバスローブを着込んだだけのベルトルドは、荒々しくドアを開けて部屋を出ると、廊下で大声をあげてアルカネットを呼んだ。

 数分ほどして、同じように裸にバスローブを着ただけのアルカネットが、髪から水滴を零しながら現れた。入浴中だったようだ。

「なんですか、こんな夜半に大声を出して。夜勤の使用人たちが驚いてしまいますよ」

 呆れ顔で文句を垂れるアルカネットの腕を掴み、強引に自分に引き寄せ、先ほどカーティスから見せられたキュッリッキの様子を念話で伝える。

「…なんて…ことに」

 一瞬でアルカネットの顔が青ざめる。

「呆けるのは後にしろ。お前は支度してすぐ大病院へ行き、ヴィヒトリともうひとり外科医を連れて、ソレル王国のイソラという町へ向かえ」

 青ざめた顔はそのままに、アルカネットはゆっくりと頷く。まだ動揺から身体の震えが止まらないのだ。

「もう軍服は届いているな?」

「ええ、受け取っていますよ」

「俺は今から総帥本部へ行って軍を動かす。ブルーベル将軍にはもう連絡はつけた。雑用云々ですぐにイソラへは行けないから、あちらのことはお前に任せたぞ」

「判りました」

 アルカネットは会釈もそこそこに、急ぎ足で自室へ戻っていった。その後ろ姿を見送って、ベルトルドは声を荒らげた。

「下僕はいるか!? 着替えを手伝え、出かけるぞ!!」

 着替えを済ませたベルトルドは、馬車専用地下通路へと向かう。すでに馬車は待機しており、リュリュが困惑げに出迎えた。

「化粧を落とす寸前だったのよん」

 腕を組んで腰をくねっと曲げる。

 馬車に乗り込みながら、ベルトルドはフンッと鼻を鳴らす。そのあとにリュリュも乗り込んだ。

「念話で伝えた通りだ」

「小娘、かなり危険な状態みたいね。医者はアルカネットが?」

「うん。ヴィヒトリともう1人外科医を連れて行くよう指示しておいた」

「なら信じて待つしかないわね…。ちょっと、ボサッとしてないで早く出しなさいよっ!」

 イラッと怒鳴り、リュリュは組んだ右足で、乱暴に馬車のドアを蹴飛ばす。

「すっ、すみません!」

 外から謝る御者の声が聞こえ、馬車が走り出した。

「寝ぼけてンじゃないわよ、ったく」

 やや大きめの口を、忌々しげに歪めると、チイッと舌打ちした。

「オカマは怒らせるモンじゃないな…」

「ぁあ?」

「ナンデモアリマセン」

 すいーっと目線をずらしつつ、ベルトルドは真顔で言う。

「ンで、どんくらい動かす気?」

「アークラ大将の第二正規部隊とダエヴァ第二部隊、魔法部隊少々を使う」

「判ったわ。編成や指揮はブルーベル将軍とアークラ大将にお任せで、ダエヴァと魔法部隊もブルーベル将軍の指揮下に入ってもらうわね」

「うん」

「それにしても、調査がまだ不十分だけれど、ケレヴィルの連中に手を出してくれちゃったから、堂々と軍を送り込まれても、文句は言えないわねソレル王国」

「ああ、ライオンの連中が無事、シ・アティウスらを救出できたしな」

 腕組をしたベルトルドは、顔を馬車の外へと向ける。

「リッキーの件がなければ、もう少し後になっただろうが…」

「今はとにかく、アルカネットを信じて任せましょ」

「そうだな…」