【小説】片翼の召喚士-episode063

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode063 【片翼の召喚士】

 雷光は轟音と共にうねりだし、地面を激しくえぐり取りながら、鞭のようにしなやかに兵士たちに踊りかかる。幾重にも稲妻を発し、触れたものは感電して死に至った。雷光に飲み込まれたものは強烈な熱で全身を焼かれて消し炭になる。

 ソレル王国兵たちは、騒然となって散り散りになって逃げ惑う。巻き込まれたくない一心で、恐慌状態に陥っていた。

 生き物のようにソレル王国兵たちに襲いかかる雷を、カーティスは汗をにじませ操作する。あまりにも威力が強すぎて、気を抜けば自らも滅ぼしかねない。ハイレベルの魔法使いが扱う高位攻撃魔法だった。

「周辺の敵は、だいぶ散らしたね。みんな逃げ回ってる」

 ルーファスは剣を鞘におさめながら振り向いた。

「判りました。我々もずらかりましょう」

 銀の杖をひと振りすると、カーティスは全身で息を吐き出した。雷光もゆっくりと収束していく。

 周囲に兵士たちがいないのを確認し、カーティスたちは合流地点へ向かって走り出した。

 走りながら、カーティスは顔の汗を手で拭う。

「攻撃魔法は、魔力の消耗が酷すぎますね…」

「いきなりイラアルータ・トニトルスぶちかましてくるとは思わなかったぜ」

 にやりとルーファスは笑む。カーティスはちらりとルーファスを見て苦笑した。カーティスの得意な魔法分野は、強化と弱体系である。攻撃魔法も扱えるが、あまり自身で使うことはなかった。

 辺りを警戒しながら、カーティスの脳裏に一人の男の顔が浮かぶ。

 神を引っ張り出さないと、倒すことができないと言われる大魔法使い。魔法スキル〈才能〉を持つ者たちの頂点に立ち、憧れと羨望を一身に受ける。

「あの方のようには、うまくいかないものです」

 疲労を滲ませた顔で、小さく安堵の息をついた。