【小説】片翼の召喚士-episode062

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode062 【片翼の召喚士】

 ヴァルトは肩ごしに振り向くと、噛み付きそうな形相のギャリーの、その奥を見て目を輝かせた。

「俺様のペルラ!!!」

 両手を広げ、今にも飛び込んできそうなヴァルトに、ペルラは鬱陶しそうにため息をついた。

 アイオン族のヴァルトは、ネコのトゥーリ族であるペルラにベタ惚れしている。シャム猫のようにシャープな美しさのあるペルラが、大好きで大好きでたまらないヴァルトは、邪険にされようがスルーされようが、それらは全てペルラの愛ゆえ、だと信じて疑っていなかった。

 ペルラは素っ気ない態度をとりつつ、スッとソレル王国兵たちを指差す。

「そこの雑魚どもを、全部片付けてくれ…」

「判った!!」

 ヴァルトの顔が、パッと花開いたように笑顔になった。

 ペルラからお願いされたヴァルトは――周りから見たら体よくあしらわれただけ――元気よく叫ぶと、その場で思いっきり翼を羽ばたかせる。気合が注入された。

 広場に所狭しとすし詰めになっていたソレル王国兵たちが、片手剣を構えながら目を細める。

「あの世まで飛んで行けっ!」

 拳を固く握り締め、ヴァルトは床を蹴って飛び出した。

 手前の兵士の顔面に拳がめり込むと、後ろに居た数十人の兵士も巻き込み豪快に吹っ飛んだ。広場は一気に騒然となる。

 見せ場を奪われたギャリーは、ヴァルトを忌々しげに睨む。

「あのクソッタレめ……。バカはほっといて、俺たちは屋上へいくぞ!」

 ギャリーは舌打ちしながら魔剣シラーを背負い直し、屋上への階段を登った。

 屋上にいる敵を、今度こそ魔剣シラーの剣風で吹き飛ばすと、ギャリーは肩の小鳥に話しかけた。

「キューリ、いつでもいいぜ!!」

『小鳥を軽く宙へ放って』

 すぐさまキュッリッキから応答が返ってくる。

 ギャリーは言われたとおり小鳥を宙に放る。すると、小鳥は淡い銀色の光に包まれ、その小さな身体を巨体に変じて屋上に舞い降りた。

「うっほ……でけえな」

 仰け反るようにして小鳥ならぬ巨鳥を見上げ、ギャリーは口笛を吹いた。

 巨鳥に変じた小鳥は、身をかがめて皆を背中に誘う。

「よし、シビルは防御を張り巡らせながら乗れ。さすがに目立つ。下の奴らが発砲してくるだろうから」

 そう言っている矢先に砲撃が開始された。しかしすぐに1人、2人と砲撃者の数が減っていったが、さすがのザカリーでも数が多すぎて、全て倒しきるのは無理がありそうだった。

 マリオンはシビルを抱えると、すぐさま巨鳥に飛び乗った。

 シビルはそのまま杖に意識を集中して、巨鳥の周りに防御結界を張り巡らせる。下から飛んでくる砲弾は、全て見えない結界の壁に弾かれた。

「みんなぁ、早く乗ってぇ~」

 マリオンがのほほんと声をかけると、呆気にとられていた研究者たちが我に返って、いそいそと巨鳥の背に乗り始めた。

 全員が乗ったことを確認して、ギャリーも飛び乗る。

「いいぜ!」

 それを合図にして、巨鳥は翼を広げ、跳ね上がった。