【小説】片翼の召喚士-episode060

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode060 【片翼の召喚士】

 マリオンたちの位置からは見えない箇所にいる兵士たちも、次々と倒れた。

「風がいい具合に吹いてて、音が乗るねえ」

 マリオンはのんびりとした表情で微笑んだ。

「ふぅ……」

 ため息をつくと、シビルは木の杖を下げた。

「確かに凄い攻撃力ですね…。ただ、敵味方おかまいなしに攻撃するのだけは、勘弁して欲しいかもです」

「都合よくわけらんなくってぇ~、ごめんなさぁ~い」

 本人が言うように、力を発する時には判別しながら攻撃はしていない。というより、広範囲に影響する攻撃の場合は、判別できないらしい。それが判っているので、シビルが魔法で仲間たちを防御して無事だった。

「まっ、そのためにシビルがいるわけだしな!」

 ギャリーはシビルの頭をガシガシ撫で回す。帽子が着崩れて、シビルは文句を言いながら小さな手で直す。

「いくぞ」

 辺りに敵の気配がないことを確認して、ペルラは首をクイッと建物に向ける。

「おう」

 倒れた兵士たちを遠慮なく踏みながら、一同は建物に侵入した。

「俺たちは寂しく、仲間の援護射撃」

 ザカリーの独り言に、ランドンが頷くようにして同意した。

 収監施設から1000メートル以上も離れた遺跡の上に座り、ザカリーは巨大な銃を構えていた。その傍らに立ち、ランドンが収監施設の方角に視線を向けている。

 海の彼方に陽が沈んでいく様を眺めながら、喧騒とは隔絶された静かな環境の中に2人は居た。

 現地から遠く離れた場所から、仲間たちを確実に援護する役目を2人は担っている。

 ランドンは魔法スキル〈才能〉の持ち主で、繊細で緻密な魔法を扱うことに最も優れている。今はザカリーの視覚とリンクして、ザカリーよりも的確に、魔法の力で索敵をしていた。

「ヴァルトの南側に狙ってるのがいる」

「らじゃー」

 ザカリーは無造作に銃身の向きをずらせる。この巨大な銃には照準器がついていない。ライフルのような形状をしているが、およそ標準的なサイズを超えている。夕闇の中でも淡い光を浮かび上がらせる銀で出来ていた。

「俺のバーガットちゃんの破壊力は、ちょー凄いんだぜ~」

 ランドンの言った方角を、正確にザカリーは見ていた。

 至近距離で見ているのとは変わらぬくらいの視覚で、1000メートル以上も離れた位置のソレル王国兵を見ている。戦闘の遠隔武器系スキル〈才能〉を持つ者の特徴だった。視覚の距離は自らの意思で調整できる。

 ヴァルトに狙いを定めているソレル王国兵は5名。

「そらよっ」

 ザカリーは銃口を定めて引金を3回連続で引いた。

 銃口からは見えない何かが飛んでいった。目の良いものなら、螺旋を描く僅かな空気の揺らぎが見えただろう。

 一直線に飛んでいった何かは、射線軸にいる3人の頭部を一瞬で貫き、3人から離れて並ぶ2人のソレル王国兵たちの後頭部そのまま貫いた。撃ち抜かれた5人のソレル王国兵は、若干のタイムラグのあと、無残にも頭部が爆ぜた。

 頭を吹き飛ばされたソレル王国兵たちの胴は、ぐらぐらりと左右に揺れると、そのまま平衡を失って木からずり落ちていく。

 それは魔弾と呼ばれる、魔力の塊を弾にしたものだ。魔法使いたちだけが作り出せる特殊なその魔弾を撃ち出せるのが、バーガットと呼ばれる特殊な銃だった。

「ほい、5ちょあがり」

 ザカリーは満足そうにニヤリと笑った。そんなザカリーの様子には頓着せず、ランドンは感情に乏しい表情のまま次を示した。

「東のタルコットのほう」

「おうけい」