【小説】片翼の召喚士-episode056

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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「だ、だってさ、仕事あるうちが華なんだし。お金貯めまくって、中年になったら人生謳歌するって、将来設計があるんだもーん」

「ったくぅ、ギルドの支部いっぱーい掛け持ちしてるでしょ。一回も連絡取れたためしがないんだからあ」

「ごめーーん」

 両手を合わせて謝罪のポーズを作り、ウインクして詫びる。キュッリッキは膨らませた頬のぶんの息を吐き出して、やれやれと天井を仰いだ。

「そんで、仲間とか言ってたけど、またどっかの傭兵団に入ったの?」

「うん。ライオン傭兵団」

 ファニーは目をぱちくりさせると、

「なんですってえええええええ!?」

 と絶叫した。そしてキュッリッキの細い首を両手でガッシリ掴むと、激しく前後にブンブン振り回す。そんな2人のそばで、フェンリルは呆れ顔で丸くなって転がっていた。ファニーの絶叫が辺りの壁に反射して、より大きく聞こえて驚いたようだ。

「召喚スキル〈才能〉ばっかずるうーーーーい!! アタシなんてアタシなんて、誰でも持ってる戦闘スキル〈才能〉でランクもBだしい、そんな有名どころから見向きもされないってえのに、召喚スキル〈才能〉持ちばっかり依怙贔屓しすぎよー!!!」

「ンがぐ…っ」

 キュッリッキは目を回しながらも、窒息気味になり両手でもがいた。そんなキュッリッキの様子はお構いなしに、そのまま勢いよく放り出す。そしてファニーは握り拳を作り、片膝を立てて明後日のほうを向き、情熱を込めて高らかに訴えた。

「チート能力ばっかり優遇されて、オイシイ人生約束されてっ! 並み程度のスキル〈才能〉しかないその他大勢の一般庶民は、地べたを這いずりながら今日も生きているのよ!! これを贔屓と訴えて何というのっ!」

「喧しいと思ったら、やっぱり起きてたか」

 盛大に顔をしかめたハドリーが、こちらに歩いてきた。

「あら、ハドリー」

 声に気づいて、ファニーは顔だけハドリーに向ける。握り拳はそのままに。

「リッキーとフェンリルが伸びてるじゃないか。狭い空間で大声出すと、響いて五月蝿いだろう。まったく」

 仰向けに伸びているキュッリッキの頬を軽く叩いて、その近くで丸まったまま伸びてるフェンリルを抱き上げた。

「なんて大声なんでしょうか……鼓膜が破れますよ」

 忌々しげに文句を言いながら、ブルニタルが歩いてきた。そして、メルヴィンとガエルも目を瞬かせながら後に続いた。

「誰よこいつら?」

 文句を言ってきたブルニタルを軽く睨みつけ、突っ慳貪に問う。

「リッキーの仲間、ライオン傭兵団だ。リッキーから話聞いてなかったのか?」

「さっき聞いたところよ」

 ファニーは立ち上がると、まだ寝転がっているキュッリッキを、ブーツのつま先で突っついた。軽く突っついていたが起きないので、次第に蹴りに変更する。

「ちょーっと、起きなさいよー、ほらあ!」

 ゲシゲシ足蹴にされているキュッリッキの様子を遠巻きに見て、メルヴィンは胃の辺りをそっと押さえた。

(あの光景をベルトルドさんが見た日には………天から雷が降ってくるな)

 メルヴィンと同じ感想を持ったブルニタルとガエルも、げんなりとした表情を浮かべて口をつぐんだ。

-つづく-