【小説】片翼の召喚士-episode054

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
この記事は約3分で読めます。

ナルバ山の遺跡編-episode054 【片翼の召喚士】

 そんなに距離は進まず、直ぐに目的の場所に着いたようで、小さな窖だった。メルヴィンが足元にスッと灯りをかざすと、ひと組の男女が倒れている姿が浮き上がった。

「あれっ?」

 メルヴィンの後ろから顔を出すと、キュッリッキは跳ね上がって驚き、勢い付けて男女に飛びついた。

「ちょっとハドリーとファニーじゃない!! どうしたのよねえ、起きてってばっ!!」

 意識を失ってる2人の胸ぐらを掴んで、逞しくグイッと引き寄せると、容赦のない勢いでブンブン前後に揺さぶる。揺さぶられるたびに、2人の頭がゴチンゴチンと当たって、見ていて痛そうだ。

「リッキーさん、それはちょっと…」

 メルヴィンがやんわりと止めるが、聞く耳持たずで2人をブンブン揺さぶり回したあと、ファニーのほうを乱暴に投げ出し、あいた片手でハドリーの髭面に往復ビンタを叩き込む。手加減なしの容赦なし。狭い窖にビシバシと音が反響する。

「い…いででっ……痛い痛いいい加減にしろコラッ!!」

 さすがに気づいたハドリーが、キュッリッキの手を振りほどこうとして身をもがいた。だが、腕も身体も厳重に縛り上げられていて、身体をクネクネと動かすだけだった。

「気がついたんだね、ハドリー!」

 にぱっと笑顔のキュッリッキを、ハドリーは目を細めて冷ややかに見やり、深々とため息をついた。

「あのな、もうちょっと優しく起こしてくれ…」

「えへへ…ゴメンなの」

 ちっとも反省してないキュッリッキをもう一度睨んで、ハドリーは身体を横に向けて腰を上げる。

「この短剣で縄を切ってくれ。それとファニーを起こしてやらねーと」

「うん」

「オレがやりましょう。これを持っててください、リッキーさん」

 黙って成り行きを見ていたメルヴィンは、灯りをキュッリッキに手渡して、ハドリーの腰にある短剣を引き抜いた。

「これだけ頑丈に縛っていたら、リッキーさんの力じゃ、かえって君を傷つけてしまいそうです」

「うむ、確かに…」

「えー…」

 心外なんだよーと文句を垂れるキュッリッキを無視して、縄から解放されたハドリーは、往復ビンタされた頬を痛そうに撫でる。

 メルヴィンはファニーの縄も切りはずしてやると、そっと抱き起こして、軽く揺すった。

「すまん、ちょっと起こすの待ってくれ」

 ハドリーは素早くメルヴィンの手を抑えて止める。メルヴィンは不思議そうに首をかしげた。

「?」

 ハドリーは軽く肩をすくめる。

「そいつが目を覚ますと猛烈に喧しいから、先に色々話しておきたいことがあるんだ」

「……判りました」

 メルヴィンは頷くと、そのままファニーを抱き上げた。

「外に出ましょうか」