【小説】片翼の召喚士-episode043

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode043 【片翼の召喚士】

 キュッリッキたちを見送ったあと、ベルトルドとアルカネットは書斎へ行った。

 ベルトルドは奥にあるチェアにドカリと座り、長い脚を組む。

「今日くらい、リッキーと一緒に過ごしても問題あるまい。カーティスのやつめ」

「その点は同感です。ですが、リッキーさんの心を慮れば、帰すのが一番ですよ」

「まあ、な…」

 ベルトルドはつまんなさそうに、フンッと鼻を鳴らした。

 ライオン傭兵団の中に、必死に馴染もう、溶け込もうとしている、いじらしい気持ちがヒシヒシと伝わってきた。カーティスから仲間だと言われて、それを嬉しく思って、表情にも喜びがありありと浮かんでいた。

 それを邪魔したいとは思わない。が、キュッリッキと一分一秒でも長く居たい気持ちは、溢れんばかりに身体を蝕んでいる。

「俺は、完全にリッキーに惚れた」

 うっとりと天井を見つめながら、ベルトルドはしっかりと言い放つ。

「おや、奇遇ですね。私もリッキーさんに惚れました」

 書斎の中が、恐ろしい程の静寂に包まれる。そして、目を合わせた途端、二人の間に火花が炸裂した。

「リッキーは、俺のものだ!」

「いいえ、私のものです」

 フゴゴゴゴッと効果音でも流れてきそうな書斎の中で、青い小鳥がピヨッと小さく鳴いた。

 小鳥の鳴き声で二人はハッとすると、軽く咳払いをして場を収めた。

「…そこまで思っているのなら、何故今回の仕事に、リッキーさんを連れて行けなどと言ったんですか? 万が一危険などあったりしたら」

「召喚の力をもっと見たくてな」

 ベルトルドは両手を組んで、背もたれに深々と身を沈める。

「お前も知っての通り、宮廷の召喚スキル〈才能〉持ちどもは、揃いも揃って無能者ばかりだ。リッキーが見せてくれた召喚の片鱗さえも、見せたことがない」

「全くですね。何のために国に召し上げられたのか」

「ああ。――リッキーが他にも、どんな召喚をしてくれるか、その力をどう使うのか、俺は見たいんだ」

 肩に乗る小鳥を人差し指に乗り移らせると、デスクの上に降ろしてやる。小鳥は平らなデスクの上を、チョンチョンと跳ねていた。

「イルマタル帝国がリッキーを放ったらかしにしてくれたお陰で、俺たちの元に引き入れることができた。今回ばかりは感謝しよう」

「彼女の不遇な過去を思えば、感謝まではいきませんが。まあ、ありがとうとだけは言っておきましょうか」

「まあな」

 ベルトルドは苦笑すると、姿勢を正して座り直した。

「アルカネット」

「はい」

「実はな、明日、正式に軍総帥の辞令を押し付けられる」

 アルカネットはキョトンっとして、目の前のベルトルドを見つめる。

「はい?」

「クソジジイの謀略にハマって、軍総帥までもが押し付けられることになったんだ」

「また仕事が増えるのですか…」

 呆れたように言って、アルカネットは溜め息をついた。

「そこで、だ。お前にやってもらいたいものがある」

 そう言って、ベルトルドは無邪気に微笑んだ。