【小説】片翼の召喚士-episode042

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode042 【片翼の召喚士】

 帰りはゴンドラではなく、地下へ案内された。

「もう少ししたら、門の近くまでの定期便が来るでしょう」

「ありがとうございます、アルカネットさん」

 カーティスとルーファスが、アルカネットに丁寧に頭を下げる。

「それではリッキーさん、また会いましょうね」

「お土産ありがとう」

 アルカネットはニッコリ微笑むと、キュッリッキの柔らかな頬にキスをした。

「こらー! アルカネット!!」

 ベルトルドが後ろで喚くが、アルカネットは涼しい顔でフッと鼻の先で笑うだけだった。

「い、行こうか、キューリちゃん」

「うん」

 ルーファスに手を引かれ、キュッリッキはベルトルドとアルカネットに、もう片方の手を振った。

「またね~」

 まるで今生の別れのような顔をするベルトルドと、優しい微笑みを称えるアルカネットに見送られ、3人は帰路に着いた。

「ハーメンリンナの地下って、凄いんだねえ~」

 地下は大きな通路が走っていて、天井もとても高くて圧迫感がない。天井も壁も真っ白で、壁と天井の一部が明るい光を放っている。床には毛足の短い絨毯が敷き詰められて、外と全く変わらない明るさに満ちていた。

「地下は全部こんな感じなの?」

「そうだよ~。迷わないように標識もあるし、換気もきちんとされてるから、空気がこもったりせず、臭もしないでしょ」

「うん」

「地上が歩けずゴンドラなもんだから、こうして地下は徒歩で移動できる通路と、乗り物で移動できる通路の、二重構造なんだよ」

「そうなんだあ」

 地上を滑るゴンドラには、着飾った貴婦人や、身なりのいい紳士しか見なかった。しかし地下の通路では、軍服を着た人々と多くすれ違う。

「こっちだよ、キューリちゃん」

 すれ違う人々も珍しげに見ていたキュッリッキを、ルーファスが苦笑気味に手を引っ張る。

 3人は更に地下に降りる。そしてそこも、上の地下通路と変わりなく明るく、床だけは絨毯が敷かれていない、剥き出しの白い床だった。

 軍服を着た人たちが列を作っている最後尾に3人は立つ。

「これから、凄く珍しい乗り物に乗るよ」

 ルーファスが意味深にウィンクすると、キュッリッキは何だろうと目を瞬かせた。

 並んで待つこと数分、突然箱のようなものが、風をまとって静かに現れた。

「!?」

 キュッリッキはビックリして箱を凝視する。

「さあさあ、乗りますよ」

 カーティスに笑い含みに促され、手を引かれるままキュッリッキは箱に乗り込んだ。

 最後にキュッリッキが箱に入ると、箱のドアが勝手に閉まった。

「きゃっ」

 キュッリッキはルーファスにしがみついて、ひとりでに閉じたドアを、訝しげに見る。

 汽車のような形をしているが、先頭がまろやかな楕円形を描いており、床にはレールのようなものは通っていない。なのに、床の上を馬が滑走するくらいのスピードで走り始めた。

 おっかなびっくりな態度を隠しもしないキュッリッキに、カーティスとルーファスは必死に笑いをこらえていた。