【小説】片翼の召喚士-episode040

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode040 【片翼の召喚士】

「仔犬に戻っていいよ、フェンリル」

 フェンリルは目を伏せると、身体は銀色の光に包まれ、萎むように光が収縮すると、そこには仔犬に戻ったフェンリルが座っていた。

 キュリッキはフェンリルを抱き上げると、小さな頭に頬ずりした。

「見事だな…。本当に見事だ」

 ベルトルドはゴクリと唾を飲む。アルカネットたちは、呆けたように固まっていた。

 この世界にはサイ《超能力》や魔法などの、超常の力を扱う者たちがいる。自身もルーファスもサイ《超能力》を使い、アルカネットもカーティスも魔法を使う。そのスキル〈才能〉を持っていなければ、到底扱うことのできない力だ。

 しかし召喚スキル〈才能〉は、それらをも軽く凌駕する素晴らしい力だ。キュッリッキが入団テストで見せた召喚、そしてこのフェンリル。サイ《超能力》や魔法など比べ物にならない。

 スキル〈才能〉とは、この世界に生きる人間たちに、生まれたとき授けられる突出した能力の事を言う。

 人間たちの持つあらゆる能力は、必ず平均水準で止まる。どんなに磨いても、練習しても、絶対その域を超えることができない。

 ある人間が、料理が上手くなりたいと練習を積み重ねる。でも、どんなに練習しても平均水準以上の料理は作れない。その人間が授かったスキル〈才能〉は、音楽系楽器演奏だった。楽器は練習しなくても、最高の音を出し、練習すれば更に素晴らしい音を紡いだ。そこが、スキル〈才能〉の有無を決定づけるのである。

 スキル〈才能〉は一人一つ必ず授けられる。そしてスキル〈才能〉は遺伝しない。稀に親と同じスキル〈才能〉を授かる子供もいるが、それは遺伝ではなく偶然だった。

 こうしたスキル〈才能〉には特殊なものがあり、魔法、サイ《超能力》、機械工学、召喚の4種類を指す。これをレアスキル〈才能〉と呼び、うち、魔法、サイ《超能力》、機械工学は何百人に一人の確率、召喚は一億人に一人の確率でしか生まれてこないと言われていた。そして、召喚スキル〈才能〉のみは、このスキル〈才能〉を授かった子供が現れると、生国が家族ごと召喚スキル〈才能〉を持つ子供を召し上げ、安全で裕福な暮らしを生涯約束する。数があまりにも稀だからだと言う理由で。

 そのため、一般に広く知られる召喚スキル〈才能〉とは、伝説上の神々の住まう世界アルケラから、あらゆるものを召喚して、使役する事。そう伝わっていた。

 伝わっているだけで、実際目にする事ができる機会は、ほぼないのが現状だ。

 このハーメンリンナにも、召喚スキル〈才能〉を持つ者たちが集められている。ベルトルドとアルカネットは、その者たちと面識を得る機会があったが、キュッリッキのような素晴らしい召喚を見せてもらえたことはない。一般に伝わる噂が、ひとり歩きしているだけの、珍しいだけのスキル〈才能〉だとばかり思っていたが、そうではなかった。

「おいで、リッキー」

 ベルトルドに手招きされて、キュッリッキはベルトルドの前に立つ。

「本当に、良い子だリッキー!!」

「きゃっ」

 素早くキュッリッキの身体を抱き寄せ、ベルトルドは自らの膝の上にキュッリッキを座らせた。

「今日は俺と一緒に寝よう、な、リッキー」

「え、えっ」

「何をしているのですかイヤラシイ! 今すぐリッキーさんをお放しなさい!」

 アルカネットが血相を変えてベルトルドの胸ぐらをつかんだ。