【小説】片翼の召喚士-episode037

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode037 【片翼の召喚士】

 まるで万歳でも叫びそうな勢いで、嬉しそうにルーファスが両手をあげる。

「ものすご~くゆっくりで、時間かかったね」

 キュッリッキがクスクスと笑顔を向けると、ルーファスはウンウンと大仰に頷いた。

 カーティスとルーファスがゴンドラから降りていると、門の前にいた若い男が、彼らに向けて優雅に一礼した。それを見て、カーティスとルーファスは慌てて姿勢を正す。

「お待ちしておりました」

「こんにちは、アルカネットさん」

「ご無沙汰してますっ」

 カーティスとルーファスは、硬くお辞儀をして挨拶をした。

 アルカネットと呼ばれた男は柔らかな笑顔で応えると、ゴンドラに近づき、ゴンドラの中できょとんとしているキュッリッキに手を差し伸べた。

 アルカネットの顔と大きな掌を交互に見て、キュッリッキはその手を取る。アルカネットに助けられながら、一度ゴンドラのへりにあがって跳び降りた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

(うわあ…、また背の高い人だあ)

 キュッリッキは首を反らして、アルカネットを見上げる。すると、愛おしむように優しい笑顔が返され、キュッリッキは顔をちょっと赤くして俯いた。

 端整で優しく穏やかな風貌に、スラリとした長身をしている。前に会ったベルトルドは、険のある目をしていたが、アルカネットは目元にも柔らかな優しさをたたえていた。それに、全身から漂う雰囲気も、包み込むような温かな優しさを感じた。

 優しさの塊のような人だなあ、と、キュッリッキは心の中で大きく頷いた。

「こちらのお嬢様が?」

「はい、召喚スキル〈才能〉を持っている、新入りのキュッリッキです」

 カーティスから簡単に紹介されると、キュッリッキを見つめるその目は、まるで高価なものでも見るかように、感極まってアルカネットは頷いた。

 その目を見た瞬間、キュッリッキは急にしょんぼりとした気分に包まれた。

 アルカネットに限った事ではなかったが、キュッリッキが召喚スキル〈才能〉を持っていることが判ると、皆こんな目をする。値踏みしながら珍獣か天然記念物を見るような、そんな不躾で不愉快な目をするのだ。

 召喚スキル〈才能〉がどれほど珍しいかなど、キュッリッキは知らない。だから、そんな風に見られるのは、嬉しいことではなかった。不愉快だと言ったほうがいいくらいに。

 キュッリッキの気持ちなど知る由もない3人は、何やら雑談をしていた。それをちょっと恨めしそうに見上げると、優しいアルカネットの視線とぶつかって、キュッリッキは慌てて下を向いた。

「申し遅れました。私はベルトルド邸で執事をしている、アルカネットと申します」

 アルカネットはその場に膝をつくと、キュッリッキの手を取って、恭しく頭を下げた。

「え、あ、はいっ、キュッリッキです!」

 思わず声が裏返ってしまい、キュッリッキの顔が真っ赤に染まった。その向こうで、カーティスとルーファスが笑いを噛み殺している。

「愛らしいお嬢様ですね。そんなに緊張しなくても、大丈夫ですよ」

 ニッコリと笑顔を向けて、アルカネットは立ち上がった。

「では皆さんこちらへ。ベルトルド様は会議が長引いていて、少々遅れます」

「判りました」