【小説】片翼の召喚士-episode031

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode031 【片翼の召喚士】

 勝手知ったるなんとやら。案内もなくベルトルドが闊歩するここは、皇王一族の住まうグローイ宮殿に併設されている、皇王が政務を執り行うエリラリンナ宮殿だ。

 エリラリンナ宮殿は、一部の高官のみが立ち入ることを許されていた。

 副宰相の地位を戴くベルトルドは、専用の休憩室を与えられている。更には、専属の使用人も付き、好きな時に出入りが許されていた。

 謁見の間の前にたどり着いたベルトルドは、扉の左右に佇む衛兵たちが開くよりも先に、サイ《超能力》を使って乱暴に扉を開いた。

「一体どういうことだ、ボケジジイ!」

 マントを翻しながら、ベルトルドは颯爽と謁見の間に入った。

 奥の玉座に座っている皇王は、渋面を作って溜め息をこぼす。

「いきなり入ってくるなり、ボケジジイはないじゃろう…」

「ボケたジジイをボケジジイと言って何が悪い!」

 玉座の前に到着すると、皇王の前で膝を折らず、片手を腰に当ててふんぞり返る。

 居丈高で傲慢で高飛車なその無礼な態度に、注意を喚起する者は居ない。侍従を含め、その場に居合わせた人々は、戦々恐々とその様子を見守ることしかできない。ベルトルドを叱り飛ばすことが出来るのは、世界広しといえどリュリュとアルカネットの二人しかいないのだ。

「して、何用じゃ?」

「とぼけるな、ジジイ! 何故ブルーベル将軍を罷免した?」

 やや険のある切れ長の目が、スウッと細められ、ブルーグレーの瞳が皇王を睨みつける。

「……そのことか」

 やれやれ、といった表情で、皇王は再び溜め息をついた。その時、

「その言動を改めんか! 小僧!!」

 突如甲高い怒鳴り声が響き、謁見の間の扉が再び開かれた。

「ぬ?」

 邪険な目つきはそのままに、ベルトルドは肩ごしに振り向く。

 洋ナシ体型というよりは、雪だるまと言ったほうがしっくりくる。デンッとせり出した下腹のせいか、胴回りが丸く見え、その上に丸い禿げた頭が乗っかっているものだから、雪だるまにしか見えない。

 新しく将軍の地位に就いた、キャラウェイ将軍だった。

 先っちょがくるりんと巻いているちょび髭に、剃ったように短い眉毛が、いかにも愛嬌がある。更に太って艶々しているためか、今年60歳にもなるのに、シワひとつ見当たらない。

(坂道で転がしたら、面白そうだな…)

 ベルトルドはひっそりと、心の中で悪態をつく。

「皇王陛下のご寵愛を受けているからといって、図に乗りすぎだぞ小僧!」

 キャラウェイはベルトルドの隣に並んで立つ。身長が165cmしかないキャラウェイは、顎を突き出しベルトルドを必死に見上げた。

 一方、190cm以上の長身をほこるベルトルドは、スラリとした体躯で脚も長い。あまりにもその対照的な二人に、皇王は必死に笑いをこらえていた。