【小説】片翼の召喚士-episode030

chapter-2.ナルバ山の遺跡編
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ナルバ山の遺跡編-episode030 【片翼の召喚士】

 目の前に書類の山を築いて、黙々と書類処理に勤しんでいたベルトルドは、リュリュの言葉に顔を上げた。

「罷免だとう!?」

「ええ」

 端整な顔を怪訝そうに歪め、ベルトルドは不機嫌な声を出した。

「ブルーベル将軍を罷免してどうするんだ?」

「後釜にキャラウェイが座ったわよ」

「はあああ??」

 両手でデスクをバンッと叩き、ベルトルドは立ち上がる。

「あのボケジジイは何をしてるんだ! 軍を弱体化してどうする! ただでさえ役立たずの烏合の穀潰しを何百万と抱えてるんだ、バカなのか?」

 腕を組んで唸ると、正面に立つリュリュをギロリと睨む。

「キャラウェイが主犯だな?」

「そうよん。あの禿頭ダルマしかいないわ」

「ハゲ豚の分際で、どうボケジジイを篭絡しやがった…」

 禿頭ダルマ、ハゲ豚と言われ放題のキャラウェイは、ハワドウレ皇国軍に中将の地位を戴いている軍人である。

 ハワドウレ皇国では政治や軍など、国の要職に就くためには、絶対に通らねばならないものがある。

 エリート養成機関ターヴェッティ学院を卒業することである。ここを卒業したものだけが、要職に就くチャンスが与えられる。地位や出身、金の力で、この国の要職には絶対に就けないのだ。

 キャラウェイ中将は確かにターヴェッティ学院を卒業したが、その能力は周囲にあまり認められていない。それでも中将の地位まで上り詰められたのは、別の才能に恵まれていたからと噂されている。

 奸智に恵まれていると。

「将軍職に就きたくてしょうがないオーラを、滲み出しまくっていたからな。非凡なる奸智を巡らせて、ブルーベル将軍を陥れたんだろうな」

「その通りよ。国家反逆罪だの転覆罪だの、あることないこと捏造しまくりで、皇王様に突きつけたって」

「あのボケジジイは、それを信じたわけじゃあるまい?」

「信じてないようだけど、一部のオバカどもがキャラウェイを後押しして、宰相マルックも抱き込んだようよ」

「ああ…」

 ベルトルドは渋い表情かおを浮かべた。

「トゥーリ族嫌いだからな、マルックのジジイも…」

「如何に皇王様といえど、宰相にまで詰め寄られたらねえ」

「仲良し老人コンビだからな。しかし、放っておけないな」

「アタシもキャラウェイは好かないわ。とっとと下水にでも流してちょうだい」

 磨き上げた爪を見ながら、リュリュは垂れ目を眇めた。

「俺はな、個人的にブルーベル将軍が好きなんだ。真っ白な毛が艶々してて、つぶらな黒い目がキュートで」

「あーたも、たいがい可愛いモノが好きよね。そこの毛玉姫みたいに」

 ベルトルドの怒気にも慣れたようで、カゴの中で丸くなって寝ている。

「ふふん。それに、キャラウェイなんぞが将軍職に就いたら、皇国軍はオシマイだ」

「どーかん」

「能無しボケジジイを締め上げてくる」

「今回は許すわ。存分にやっておしまいなさい」

「おう」