【小説】片翼の召喚士-episode03

chapter-1.ライオン傭兵団編
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ライオン傭兵団編-episode03【片翼の召喚士】

「ありがとう」

「ごゆっくり」

 オーブンから出てきて、すぐ運ばれたのだろう。チーズとベシャメルソースが、まだグツグツと皿の中で音をたてている。

「美味しそうな匂い。アツアツだあ~」

 それを見たキュッリッキの顔が、ニッコリと微笑んだ。そのあまりにも愛らしい笑顔に、食堂に居合わせた傭兵たちがドキリとする。

 昼時ともあって、食堂は傭兵たちで賑わっていた。客は殆どが男ばかりで、キュッリッキのような若い娘は一人もいない。それに、キュッリッキは珍しいとされる召喚スキル〈才能〉を持っているので、傭兵たちの間でも有名人だ。そのキュッリッキがギルドで食事をしているので、自然と皆キュッリッキに視線を注いでいた。

 ジロジロ見られていることなど気にもしていないキュッリッキは、スプーンですくったドリアに、小さな口で「フゥ、フゥ」と息を吹きかけ食べている。熱々すぎて、すぐには口に入れられないのだ。

 ドリアセットのトレイには、ドリアの皿とアイスティーしか置いていない。本来は緑の綺麗なサラダが付くが、生野菜が苦手なキュッリッキはサラダを省いて注文している。野菜が嫌いなわけではないが、青臭くて生はどうしても食べられなかった。残すのも悪いので、サラダは省いてもらっていた。

 半分位たいらげたところで、向かい側に誰かが立っていることに気づいて、キュッリッキは顔を上げた。

「こんにちは、お嬢さん」

 端整な顔立ちの男で、やや険のある切れ長の目をしている。しかし、表情はとても優しく微笑み、どことなくヤンチャな印象を目元に漂わせていた。

 ポケッと固まっているキュッリッキの様子に、男は面白そうにくすりと笑って椅子に座った。片方の手で頬杖をついて、キュッリッキに笑いかける。

「キミに仕事の依頼をしに来た。12時に会うと、約束をしただろう? ちょっと過ぎてしまっているが」

「あっ」

 男の不思議な雰囲気にのまれ、キュッリッキは一瞬忘れてしまっていた。

 優しい表情をしているのに、全身からは何か威圧的なものを感じる。見た目はまだ20代後半くらいで美青年なのに、周りの厳つい傭兵たちが竦むような迫力が滲み出ているのだ。実際周囲の傭兵たちは、マッチョな体格を縮こませて首を竦めている。でも、キュッリッキは怖く感じなかった。

「えと、お仕事は」

 居住まいを正して切り出すと、男は横に小さく首を振った。

「道道話すとしよう。食事を済ませてしまいなさい」

 穏やかに言われて、キュッリッキは頷くと、急いでスプーンを動かした。

 とは言っても、もともと食べるペースが遅く、口に含む量も少ない。それでも懸命にペースを上げて食べた。

 なんだか必死に食事をするキュッリッキの様子に、更に笑みを増やすと、男は愛おしさを込めて、優しくキュッリッキを見つめた。

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