【小説】片翼の召喚士-episode026

chapter-1.ライオン傭兵団編
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ライオン傭兵団編-episode026 【片翼の召喚士】

「よっ」

 ヒョイっとギャリーが顔を出した。

「…ギャリー」

 ベッドに腰掛けて服をたたんでいたキュッリッキは、若干身を固くして首をすくめる。

 警戒心丸出しの、やるなら受けて立つ、とでも言いたそうな表情を向けられて、ギャリーは頭をガシガシ掻いた。

 ギャリーはのっそり部屋に入ると、大きな掌をキュッリッキの頭にぽんっと乗せた。

「さっきは済まなかったな、言いすぎた」

 一瞬殴られるのかと目を瞑ったが、そっと掌が頭に置かれただけだった。そして昼食の時のことだと気づいて、ちょっとビックリしてしまう。

 てらいもなく率直に謝られて、キュッリッキは意外そうに目を丸くした。てっきりギャリーのような大人は、年下に対して謝るようなことはしないのだと思っていたからだ。

「なんでぇ、豆鉄砲でも食らったような顔して」

「だって……謝られると思ってなかったんだもん」

「今回はオレが悪かったんだ。そりゃ、謝るさ」

「そう、なんだ…」

 謝って不思議がられるのも複雑である。しかし、何故そう不思議がるのか、ギャリーにはよく判っていた。

「中には謝らねえ大人もいる。自分に非があると判っていてもだ。子供でもそんな奴はいるし、それはそいつの、人間性の問題だな。オレもだが、ここの連中は自分に非があれば、認めてちゃんと謝る」

 無頼者のように見られがちな傭兵の中には、確かに自らの非を認めない者もいる。礼儀なんてクソくらえというスタイルが、傭兵らしいとまで勘違いしている者も多い。キュッリッキはそんな残念な傭兵たちを見てきたのだろう。だが、ライオン傭兵団は違う。そして、違うと判ってもらえるよう、ギャリーたちはキュッリッキに示していかねばならない。

「うん、判ったの」

 キュッリッキは表情を和らげて頷いた。ちゃんと謝ってもらったのだから、いつまでも意地を張る必要はない。それに、ギャリーがからかうことで、みんなとの切っ掛けを作ってくれていたことも判っていた。内容面に問題はあるけれど。

 硬さが取れて、穏やかになったキュッリッキに、ギャリーは真顔になる。

「それとな、飯はなるべく少しずつ、量を増やしていきながら食うんだぞ。スプーンひと匙ぶんくらいからでいい。オレたちが受ける仕事は、体力勝負になる。キリ夫妻の飯は美味いだけじゃなく、栄養面もちゃんと考えてくれてるからな」

 これまでキュッリッキが受けてきた仕事よりも、ずっと大きなものになるだろう。体力もそれに見合うだけ身につけなくてはならない。心構えを諭されて、キュッリッキは神妙に頷いた。

「ちょっとずつ、頑張ってみる」

「おう」

 キュッリッキが素直に返事をしたので、ギャリーはニカリと笑った。