【小説】片翼の召喚士-episode025

chapter-1.ライオン傭兵団編
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ライオン傭兵団編-episode025 【片翼の召喚士】

 もとから少食で、普通の量に盛られた料理を食べるのも遅い。食べたくないのではなく、すぐ満腹感を得てしまうのだ。

 幸いババロアは喉越しもよく、お腹いっぱいに食べられそうだ。

「もっと沢山食べねえと、ちっぱいがおっきくならないぞ」

「むっ!」

「ギャリーさん、あんまり言わないほうがいいですよ…」

 メルヴィンが緩く嗜めると、マリオンも「そーそー」と睨む。

「デカぱいのおめーに言われても、嫌味だぞ」

「アタシのことはぁ、どぉーでもいいのよお」

「だいたい、あんだけしか食わねえから、栄養が回らねんだ。もっと食えばちっぱいにも栄養が回んだろう」

「まーったくアンタは、デリカシィが欠片もないわねえ」

「シっ」

 口に人差し指をたて驚いているメルヴィンを見て、そしてみんな視線をキュッリッキに向ける。

「ほらあ、泣かしちゃったあ~~~」

「ギャリーさんっ!」

「あちゃ…」

 ギャリーを睨みつけながら、キュッリッキの目からは大粒の涙がぽろぽろこぼれていた。

 胸が小さいのはずっと気にしている。しかしこればかりは、どうしようもない。何故ならキュッリッキはアイオン族だからだ。

 背に翼を2枚持つアイオン族は、空を自由に翔ぶことができる。そのためか、体重が極端に少なくて、平均的な体格のヴィプネン族と比べると、20kgくらいは少ないのだ。しかもアイオン族は太ることができない体質である。どんなに暴飲暴食を繰り返しても、絶対に太らない。

 さらに極めつけは、アイオン族の女性は総じて胸のふくらみが乏しい種族でもあった。一応個人差もあるが、貧乳だのちっぱいだの言われるレベルである。

 それにキュッリッキは、自分がアイオン族であることを、誰にも知られたくなくて隠している。――心の傷と共に。

 ギャリーに反論しようとしたが、そのことを言うわけにもいかず、キュッリッキは悔しさを込めて涙を流すしかなかった。

「あら、あら、まあまあ」

 キリ夫人は立ち上がると、キュッリッキの傍らに立って、エプロンの裾で涙を拭ってやる。

「ギャリーちゃん、女の子の身体のことをあげつらうのは善くないことよ。小食なのは、身体がもうこれだけでいいよ、って言っているの。無理に食べると、お腹をこわすかもしれないしね」

「へい…」

 ヤッチマッタ、と表情に書いて、ギャリーは肩を落とした。

「さあキュッリッキちゃん、ババロアはもうちょっと食べられそうでしょ?」

「うん」

「まだまだいっぱいあるから、食べてね。おばさんの自慢のデザートよ」

「食べるの」

 しゃくり上げながら、スプーンですくったババロアを口に運ぶ。ババロアのほどよい甘さとミルクの味が、キュッリッキは気に入っていた。

 キュッリッキの様子に安堵して、キリ夫人は腰を上げる。

「さあみんな、冷めないうちに食べちゃってね」

 優しい笑顔のキリ夫人に場を収めてもらい、みんな食事を再開した。