ライオン傭兵団編-episode021 【片翼の召喚士】
ハンコをぽちっ、ハンコをぽちぽちっ、サインをササッ、そして書類を積み上げる。そんな作業的業務をこなしていると、ベルトルドは斜め前方にある、小さなデスク前のリュリュを見た。
「なあ、今日はキュッリッキの引越しの日だよな?」
書類にペンを走らせていたリュリュは、顔も上げず「そうね」とだけ答えた。
「引越し祝いを持って行ってやろうかなあ。何がいいだろうか。そだ、こないだの入団テスト合格祝いも追加で持っていかねばならない」
「メモくれたら、アタシが手配して、業者に運ばせるわよ」
「バカを言うな。この俺自らが持っていかずしてどうする」
「おバカ言ってるのはあーたのほう。仕事は夜まで山のようにあるんだから、余計なコトはしなくてよろしい」
「フンッ! 仕事なんか後回しでじゅうぶんだ! 俺のキュッリッキの大切な日だぞ」
「あの小娘のことなら、メルヴィンとガエルが引越しの手伝いに行って、ちゃんと済ませてるわよ」
「なっ……なんだとぅ!」
いきり立ってベルトルドは立ち上がる。
「あの青二才と野獣め! 俺のキュッリッキを押し倒して好きにしてるとか許さん!」
「……誰がそんなこと言ったのヨ」
握り拳がフルフルと震え、端整な顔は嫉妬に歪んだ。
「ベッドに縛り付けてアンなコトやコンなコトをっ! 羨ましい…じゃない! ああ、汚らわしくて口にも出せない事をあいつら~~~!」
「おだまり」
デスクの引き出しから分厚い住所録帳を取り出すと、サイ《超能力》を使ってベルトルドの顔面に投げつけた。
「フゴッ!」
サイ《超能力》で加速したため、本来よりも重くなった分厚い住所録帳を見事顔面に喰らい、ベルトルドは黙った。
「妄想劇場そこで閉幕。さっ、デスクの上の書類を30分で片付けなさい。その後予算案の会議よ」
ストンッとチェアに座ると、ベルトルドはベソ顔でリュリュを見た。
「なー、リュー」
「おだまり」
「ちょっとだけ……10分だけ」
「その10分で書類の山2つは減るわ」
「じゃあ、5分だけ」
「山1つぶん」
「3分」
「……」
はあ…と溜め息をつき、リュリュはスクッと立ち上がる。そして、クネッ、クネッと身体をくねらせながら、ベルトルドの傍らに立った。垂れ目を眇め、ベルトルドをジッと見下ろす。
「ベル」
仰け反りながら見上げてくるベルトルドの顎を、ガシッと力強く掴む。
「最近は遠慮してあげてたけど、あーた、お仕置きが必要なようネ?」
ガタガタとベルトルドが震えだし、次第にリュリュの顔が妖しく微笑み出す。
「このところ、あーたの暴れん棒を咥えてないから、お口の中が寂しくってン」
「やっ……やめっ」
「会議までの30分、ねっとりお仕置きよン」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなっ」
「おとなしくせんかわれえええええええええええっ!」
「いやあああああああああああああああ」
悲鳴を上げるベルトルドは床に引っ張り落とされると、リュリュのサイ《超能力》によって仰向けに押さえつけられた。そしてベルトを外され、勢いよくズボンと下着がずり下ろされる。
「お嫁にいけなくなるうううううっ!」
「問答無用!」