ライオン傭兵団編-episode020 【片翼の召喚士】
「それにしてもよう、あのババアども、マジ凄かったな」
「ああ、彼女たちは戦闘スキル〈才能〉を持つ、元傭兵出身者なんです」
「マジすか…」
頷いてハドリーは笑った。
「傭兵夫婦がこのアパートには結構住んでいて、この界隈の自警団もやっているご婦人会のメンバーなんっすよ」
ハーツイーズ街には、沢山の船が乗り入れる港がある。表向きの目的、そして、裏目的の密航者や犯罪者もまた、多く入ってくる。皇国の警務部の目をかいくぐって、街の安全を脅かす存在を取り締まるのも、ボランティアのご婦人会の仕事なのだ。
「リッキーはまだ子供だから、彼女たちもいつも気遣ってくれていて。あんな悲鳴をあげるもんだから、吃驚して考えるより駆けつけてきたんでしょうね、たぶん」
「そうですね」
「まあなんにせよ、何事もなくて良かった。お二人もリッキーを送ってくれて、ありがとでした」
「いえ。じゃあ、オレたちも帰りましょうザカリーさん」
「ンだな」
「キュッリッキさん、また」
「またな」
「うん。ありがとう、メルヴィン、ザカリー」
「オレは二人を下まで送ってくるよ。朝飯一緒に食いに行こう」
「判った」
メルヴィン、ザカリー、ハドリーが部屋を出て行ったあと、キュッリッキは大きな溜め息をついた。