【小説】片翼の召喚士-episode02

chapter-1.ライオン傭兵団編
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ライオン傭兵団編-episode02【片翼の召喚士】

 目覚ましもなく、朝6時きっかりに、キュッリッキは目を覚ました。

 小さな口をいっぱいに広げて欠伸をすると、ベッドから降りて、窓に駆け寄り勢いよく開けた。空は太陽の光に照らされて、明るい水色に染まっている。

「イイお天気」

 軽く伸びをして背筋を正すと、洗面所に駆け出した。木桶に水をいれて、顔を洗う。桶の水を捨てて今度は歯を磨き、髪を梳かして髪飾りをつけた。

 部屋に戻ると、引き出しが3つしかない小さなチェストの上の引き出しを開け、水色のシンプルなワンピースを取り出す。寝間着代わりに着ているシャツをサッと脱いで、ワンピースをまとった。

 身支度が整うと、汚れた洗濯物をいれたカゴを取り、部屋を出て鍵を閉める。

 薄暗い踊り場に出ると、古ぼけた木の階段を降りて建物の外に出た。

 そこは芝生の生えた中庭で、顔馴染みの主婦たちが、洗い場で洗濯物を洗っていた。

「おはよう」

 キュッリッキが挨拶を投げかけると、主婦たちは手を止めて「おはよー」とそれぞれ笑顔で挨拶を返してきた。

「仕事明けかい? 大変だねえ」

 4人いる主婦の中でも、ひときわ恰幅のいい主婦が、隣にしゃがんだキュッリッキを労う。

「うん。でも、またすぐに新しい仕事が入りそうなの」

「あれあれ」

 シーツを洗い始めたキュッリッキを見て、主婦たちは目を丸くした。

「ウチの亭主も、キュッリッキちゃんほど甲斐性があればいいのにねえ」

「全くだよ。ここんとこ、毎日ギルドで酒飲んでる有様さね」

 これに、どっと笑いがおきた。

 この主婦たちは、キュッリッキが住むアパートの近隣さんである。

 傭兵向けに部屋を貸し出しているアパートだ。キュッリッキのような独身者にはワンルームで、3坪ほどの広さしかない。しかし、シャワールーム、トイレ、キッチン、ベッド、チェスト、テーブルがあらかじめついているので、傭兵たちに大人気だ。更に、中庭があって、大きな洗い場もあるので、洗濯するのにとても助かる。干す場所も広いので、シーツなどの大きめの洗濯物は中庭に干せた。

 世間話に花を咲かせながら、主婦たちはノロノロと手を動かしている。キュッリッキは適当に相槌を打ちながら、素早く手を動かして洗濯を終えて、シーツなどを干して部屋へ戻った。

 空の洗濯カゴを床に置くと、今度はシャワールームとトイレと洗面台を洗いにかかり、キッチンも磨いて、床と玄関を掃いた。

「ふう、お掃除終わりっと」

 仕事が入ると、数日留守にする。なので仕事が明けると、いつもこうしてしっかり掃除をするのだ。

 お茶を飲もうとキッチンに向かい、ふと小さな置時計が見えた。

「あ、そろそろ出ないと時間に遅れそう…」

 時計の針は、11時を指そうとしていた。

 昨夜仕事から戻ると、傭兵ギルドから使いがあり、今日の12時にギルドに来るよう言われたのだ。仕事の依頼主が、直接話をしに来るらしい。

「ギルドの食堂で食べればいっか」

 壁に掛けてあったポシェットを取り肩にかけると、キュッリッキはアパートを出た。