【小説】片翼の召喚士-episode017

chapter-1.ライオン傭兵団編
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ライオン傭兵団編-episode017 【片翼の召喚士】

 奥の誕生席に座らされたキュッリッキは、一斉に注目を浴びることになり、再び顔を赤くして俯いた。

「よう、追加注文の酒を持ってきたぞ」

 大きなトレイに、木のジョッキを沢山並べて、それを両手にそれぞれ持って大男がやってきた。

「ありがとうございます、マスター」

 キュッリッキの斜め左に座っていたメルヴィンが、立ち上がって片方のトレイを受け取る。

「よう嬢ちゃん、俺はこの《豪快屋》の店主でグルフ、って言うんだ。よろしくな」

 もみあげがやたらと毛深く、筋肉隆々のガタイ。上半身裸にフリルのピンク色のエプロンをした、何とも言えない迫力のグルフに、キュッリッキは興味津々の眼差しを注いだ。

 グルフ自らキュッリッキの前にジョッキを置き、それぞれ皆の前に並べていく。

「歓迎会って聞いちゃいたが、おめーらのところに新入りとか、珍しいな。こんなめんこい子だから、メイドか?」

「違います。ちゃんとした傭兵ですよ」

 カーティスが否定する。何故みんな、メイドと間違えるんだろうと、キュッリッキは憮然とした。

「傭兵!? こんなに細っこいのにか? 魔法とか使うんかい?」

 黒い目を丸くして、グルフはキュッリッキの顔を覗き込む。

「アタシは召喚士よ」

 首すくめてグルフの目を見つめ返しながら、キュッリッキはもそもそと言った。

「召喚士ぃ~~!?」

 グルフのドデカイ声に、店内が一瞬静まり返る。そして、ドヨッと店内が騒然とし、ライオン傭兵団の席に客たちが群がりだした。

「オイ召喚士ってほんとか!」

「召喚士ってあの召喚士か? 初めて見るぞ」

「ハーツイーズんとこのギルドにいるって噂を聞いたことあるぜ」

「召喚士ってなんだよ?」

 ワイワイとむさっ苦しい連中が人垣を作り、誰だ誰だとウヨウヨ叫ぶ。

 騒ぎを治めようとメルヴィンが腰を浮かせたとき、ガタリと勢いのいい音が鳴り響き、一瞬店内が静寂に包まれた。

「さあオマエたち! 拝観料を払うがいい!!」

 空のジョッキを野次馬の群れに突き出し、もう片方の手を腰にあて、金髪の男が仁王立ちで叫ぶ。

「ありがたい召喚士サマだぞ! 一人金貨一枚だ!!」

「高すぎるだろ!!」

 異口同音に野次馬たちが叫び返した。

「なんだ払えないのか! ならあっちへいくんだ、俺様たちはカンゲーカイの真っ最中なのだ!!」

 金髪の男のいちいち偉そうな言い方と態度に気圧されて、野次馬たちはぐっと引き、渋々と退散を始めた。その野次馬たちに舌を出し、鼻を鳴らして金髪の男は腕を組む。美形な顔立ちなのに、その尊大な態度の存在感が強かった。

「なんてケチな連中だ!」