ライオン傭兵団編-episode016 【片翼の召喚士】
「アルケラって世界には、色んな子がいっぱーい住んでるの。神様とか不思議な姿の生き物とか。昨日は敵を一気に倒す方法を考えていたら、ゲートキーパーと闇の沼が、アタシの作戦に同調してくれて、それであの子達に、こちらにきてくれるようお願いしたの。魔法じゃないの。この目でアルケラを視て、呼び寄せることができる、そういう力」
自分では丁寧に説明したつもりだった。しかし、メルヴィンの顔は、判ったような、判らなかったような、そんな複雑な色を浮かべていた。
「判りづらかったかな…、ごめんね」
しょんぼりと肩を落とし、キュッリッキは切なげにため息をこぼした。口下手で説明することに慣れていないので、尚更ガッカリしてしまった。
護衛の仕事で召喚の力を使うことは、あまりない。あらかじめ、当たり障りのないアルケラの住人を呼んでおくので、召喚するところを見せたことが殆どなかった。
過去所属した傭兵団で召喚の力を見せつけても、スゲースゲーの連呼で、とくに興味を持って聞いてくる者も皆無に等しかった。だから、こんなふうに説明に困ることも、あまりなかったのである。
「い、いえ、こちらこそごめんなさい! オレの想像力が乏しいから、想像しきれなかったんです。アルケラがどういうところなのか、とか。でも、召喚するという仕組みのようなものは、理解出来たと思います」
「……ホント?」
「ええ。100パーセント正確ではないかもしれませんが」
照れくさそうに笑うメルヴィンに、キュッリッキは初めて愛らしい笑顔を向けた。
全部ではないにしても、自分の説明したことが、少しでも伝わったという事実がとても嬉しい。
「この先いくらでも機会はありますから、教えてくださいね、召喚のこと」
「うんっ」
嬉しさのあまり、声が弾む。
こんなにも屈託のない顔で微笑まれて、メルヴィンは一瞬ドキッとした。
追今しがたまで、緊張を貼り付けたような顔をしていたのに、今は素敵な笑顔を浮かべている。もとより美しい顔立ちだから、眩しささえ感じてしまう。
これをきっかけに、少しずつ馴染んで、みんなとも話ができるようになればいいとメルヴィンは微笑した。