ライオン傭兵団編-episode015 【片翼の召喚士】
ドアを開けると、知らない男が立っていた。男はちょっと会釈をする。
(確認しないで開けちゃった…)
――いいか、女の一人暮らしは危ないんだ。無闇にドアを開けるなよ!
そうハドリーから念押しされていたのに、迂闊にも開けてしまった。
無用心に開けたことを後悔しつつ、身を固くして男を見上げる。
キュッリッキの怯えたような表情を見て察したのか、男はすぐ柔らかな笑顔を浮かべ、慇懃に頭を下げた。
「いきなりごめんね。オレはライオン傭兵団所属の、メルヴィンって言います。今夜キミの歓迎会があるから、迎えに来ました」
(歓迎会……あ)
明け方カーティスたちと別れる際に、誰か迎えに寄越すようなことを言っていたのを思い出した。
(そうだ、今夜は歓迎会してもらうんだった)
今時分まですっかり忘れていたので、キュッリッキは内心慌てた。
「ちょっと待っててね」
「はい」
とは言ったものの、ドアを閉めていいか戸惑い、神妙な顔で考え込む。素っ気ない態度になりはしないか、果たしてドアを閉めていいものだろうか。
「オレは、下で待っていますから。ごゆっくり」
メルヴィンは感じの好い笑顔で言うと、直ぐにその場から離れていった。それに安堵してドアを閉めると、キュッリッキは室内に駆け込んだ。
肩出しになっている中袖のオレンジ色のカットソーと、小花がプリントされた白いミニスカートに着替えた。
自分の歓迎会ということだから、数少ない外出着をチョイスする。
姿見で身だしなみをチェックし、ポシェットをかけると、キュッリッキは部屋を出た。