【小説】片翼の召喚士-episode010

chapter-1.ライオン傭兵団編
この記事は約3分で読めます。

ライオン傭兵団編-episode010 【片翼の召喚士】

「えっ!? オッサン?」

 思わず声に出して言ってしまい、怪訝そうな視線がチラホラ投げかけられる。ザカリーはヘラリと笑って、ドサッと座り込んであぐらをかいた。

(誰がオッサンだ、無礼者)

(す、すんませン…)

 遠く離れたハワドウレ皇国から、念話を飛ばしてきたのはベルトルドだった。

(えっと…、オレになんか用っすか?)

 ヘラリと応じ、愛想笑いを念に込める。

(これからキュッリッキの入団テストだろう、その中継にお前の目を借りる)

(あー、なるほど)

(どうせルーファスは、その場にいない他の連中に見せるために、中継をするんだろうからな。それに、お前の目を通した方が確実だ)

(ういっす)

 ザカリーは戦闘の遠隔スキル〈才能〉を持つ。このスキル〈才能〉を持つ者は、非常識なほど視力が良い。1km先の小さなものも、鮮明に捉えることができるのだ。もちろん常にそんな状態では疲れてしまうので、望遠鏡のように視力はコントロール出来る。

 現在地とソープワート軍の距離は、おおよそ400mほどになる。ザカリーにとって、造作もない距離だ。

(それと、テスト相手の様子を説明しろ)

(了解っす。――えーっと、戦力は1個大隊、率いるのはチャイヴズ将軍です)

(ぬ? 大隊程度にチャイヴズ将軍が出張っているのか)

(そうなんっすよ。弓隊のキャッツフット隊長もいるんで、まあ、あの2人は常にセットのようなもんですしね)

(確かにな。仲良し老人コンビ)

 老人コンビなどと言うと、可愛らしいイメージを浮かべてしまいそうだが、戦場では絶対相手にしたくないコンビだと、ザカリーは内心ゲッソリとした。

(全体の戦力は600人あまりっすね。前衛には騎馬兵を置いてますが、イノシシ軍隊の異名を持つサントリナ軍が相手ですから、恐らく中央突破してくるサントリナ軍を、騎馬隊は左右に分かれて誘い込み、魔法隊と弓隊で屠る作戦を取りそうっすね)

(読まれていても、実行してしまうのがサントリナ軍のイイところでもある)

(いや、全然よくねえっす…)

(冗談に決まっている)

(へぃ…)

(あの様子だと、ソープワート軍はいつでも戦闘開始出来そうだな。サントリナ軍が突っ込んでくるのを、待ち構えているのかな?)

(おそらくは。こちらで奇襲を仕掛けるんで、突っ込まないよう、カーティスがサントリナ軍の陣営に行って、話をつけていると思いやす)

(そうか。なら、キュッリッキのお手なみ拝見だな)

 ククッと笑うベルトルドの念話の声を聞きながら、ザカリーはキュッリッキを見る。

 愛らしい顔をソープワート軍に向け、キッと睨みつけている。細っそりとした小さな手をしっかりと握りしめ、攻撃開始の合図を待っていた。

 レア中のレアと呼ばれる召喚スキル〈才能〉。果たしてどのような力なのか、それがもうすぐ披露されようとしていた。

コメント