【小説】Counter Attack 第二話:利子と英雄

Counter Attack
この記事は約7分で読めます。

第二話:利子と英雄

クラスメイト
クラスメイト

「ねーねーリシっち、今からゲーセン行かない?」

利子
利子

「あー、ゴメーン、今日は用事あっから、今度誘って」

クラスメイト
クラスメイト

「おっけー、また月曜にネ」

利子<br>
利子

「またー」


 授業も終わり、帰宅する者、部活動へ行く者、次々と生徒が教室から出て行く。


 利子としこは教科書の入っていないカバンを持つと、窓際の一番後ろの席へ向かう。


利子
利子

「ヒーロー、一緒にレンタル屋付き合ってよ」


 カバンに教科書やノートを詰めていたヒーローこと、英雄ひでおは顔を上げる。


英雄
英雄

「DVDでも借りるのか?」

利子
利子

「そそ」

英雄
英雄

「判った」


 カバンのフタを閉じて、英雄ひでおは立ち上がった。


英雄
英雄

利子リシ

利子
利子

「にゅ?」

英雄
英雄

「数学と国語の宿題出てただろ。教科書とノートをカバンに入れろ」


 真顔の英雄に見下ろされ、利子は明後日の方向へ視線を泳がせた。


利子
利子

「月曜の朝、ラブちゃんに写させてもらうから、いいんだもーん」

英雄
英雄

「お前な…」


 英雄の小言は校門を出るまで続き、利子はうんざりとため息をつく。


利子
利子

「宿題なんてマジメにやったって、人生になんの影響も与えないよう」

英雄
英雄

「人生に影響はなくても、成績に影響を与える」

利子
利子

「むぅ」


 利子と英雄は幼稚園に入る前からの幼馴染で、高校も同じところに入り、教室も一緒だ。

 兄弟同然に育った2人は、何かと一緒にいる。しかし周囲からは、2人の間に春めいた雰囲気ムードは全くナイ、と言われていた。

 当然2人も、そんなコトは考えてすらいない。


 どこか適当な利子としこと真面目な英雄ひでお。案外うまくいっていた。


*  *  *


 駅前のレンタル屋に入り、利子は洋画コーナーへ向かう。


英雄
英雄

「なんて映画?」

利子
利子

「えっとね、『Back to the Future』」

英雄
英雄

「へえ、利子リシがそんな古い映画知ってるなんて、意外だな」

利子
利子

「あたし知らなかったんだけど、由里姉ゆりねえがこないだ話しててさあ。どんな映画なのか気になって、観てみようかと」

英雄
英雄

「…ああ、あの引きこもりなヒトか」


 英雄は表情を渋そうに歪めた。


 以前利子に紹介されたことがあるので、顔は覚えている。

 美人だが愛想が悪く、しかも無職で引きこもり。英雄は悪印象しか感じなかった。でも利子は姉のように慕っていて、よく由里子ゆりこの家に遊びに行っているという。


 そこも妙に気に入らなく感じる英雄だった。


利子
利子

「あったあった。――ええ、3部作なんだあ」

英雄
英雄

「オレ1作目は観たことあるけど、2部3部はまだ観たことないんだよな」

利子
利子

「じゃあ、あたしんちで一緒に観よ」


英雄
英雄

「3部作じゃ、夕飯までに観終えるのはさすがに無理だな」

利子
利子

「ご飯うちで食べていけばいいよ。そしたら今日中に全部観れる」

英雄
英雄

「そうさせてもらうか」


 家族ぐるみでも付き合いがあり、どちらかの家でご飯を食べるのも、昔からごく当たり前のようにしてきていた。


利子
利子

「ただいまー」

利子の母
利子の母

「おかえり。あら、英雄ひでおクンいらっしゃい」

英雄
英雄

「お邪魔します」

利子
利子

「母さん、今日の晩ご飯、英雄ヒーローもうちで食べてくから」

利子の母
利子の母

「あらそう。じゃあ英雄クン、お母さんにちゃんと電話入れておくのよ」

英雄
英雄

「はい」

利子
利子

「あたしの部屋行こ」

クラスメイト
クラスメイト

「お菓子と飲み物用意しておくから、あとで取りに来てね」

利子
利子

「はーい」


 利子と英雄は2階へあがり、突き当たりの部屋へと入る。


 部屋の中をザッと見渡し、英雄はため息を露骨に吐き出した。


英雄
英雄

「なんで勉強机の上に、ブラジャーとパンツを無造作に置いてある…」

利子
利子

「やだ、見ないでよっ」


 利子は慌てて机に飛びついた。


英雄
英雄

「もうちょっと、色っぽいモノ身につけろよ」

利子
利子

「うっさい!」


 水玉模様のブラジャーとパンツを引っつかみ、急いでチェストにしまいこんだ。


利子
利子

「別に見世物じゃないんだから、どんなのつけててもいいんだよ!」

英雄
英雄

「それはそうなんだが…」

利子
利子

「お菓子取ってくるから、テキトーに座ってて!」


 顔を真っ赤にして、利子は憤然と部屋を出て行った。


英雄
英雄

「まあ、確かに見世物じゃないが。あんな感じだと、クマちゃんパンツやウサギちゃんパンツとか、普通にはいてそうだな」


 どこかガッカリしたように呟き、英雄はテレビの前に座った。



 2人は1作目を観たあと、豚バラカレーライスの晩ご飯を食べ、2部3部と立て続けに鑑賞した。


利子
利子

「いいなあ、あたしも欲しいなデロリアン」

英雄
英雄

「生ゴミを燃料にするのは、エコでいいアイデアだな」

利子
利子

「あたし欲しいの、機関車のやつ」


 英雄は肩をすくめると、タブレットをいじってWikiを開いた。


利子
利子

「そいえば、由里姉ゆりねえがデロリアン作ってるって言ってた」

英雄
英雄

「は?」

利子
利子

「あたしもおんなじ反応したんだけど、けっこーマジな感じだった、由里姉ってば」

英雄
英雄

「頭だいじょうぶなのか?」

利子
利子

「ヒーローが思ってるほど、由里姉ゆりねえはヘンじゃないよ」


 利子は口を尖らせて反論する。


 英雄は由里子が無職で引きこもっていることを、いつもなじっている。それで由里子のことを悪く言う。


利子
利子

「無職で引きこもってる人なんて、世の中いっぱーいいるじゃん。由里姉だけじゃないぞ」

英雄
英雄

「それが問題なんじゃ」

利子
利子

「無職も引きこもる事情も、人によって色々あるんだよ。――由里姉ゆりねえ見てるとさ、色んな事に疲れちゃってるような、そんな感じがするんだよね~」

英雄
英雄

「疲れ、ねえ…」


 失笑するように英雄は口の端を歪めた。


利子
利子

「あたしらまだ子供だから、オトナの深い部分は判んないんだよ、タブン」


 利子は手をグーに握ると、英雄の片頬を軽く小突く。


利子
利子

「あたしたちもオトナになって、社会経験積んだら、きっと判るようになるって」


 無邪気にニッと笑う利子に、英雄はちょっと拗ねたように目を向けた。


英雄
英雄

「普段バカなことしか言わないのに、妙に正論吐くんだから困る」

利子
利子

「えー、ひどーい」

英雄
英雄

「デロリアン作るって言っても、せいぜいが模型のようなもんだろ。百歩譲って作れたとしたら、尊敬してやるよ」

利子
利子

「まあ、由里姉のこと大好きだけど、作れるとはさすがに思わないわ、あたしも」


 英雄の持つタブレットを覗き込み、次元転移装置やタイムサーキットなどの説明を目で追う。


 由里子は目覚まし時計をいじっていた。タイムマシンだからイコール時計、という安易な説明。


 でも、もしかしたら? という思いも利子にはある。


利子
利子

「ホントに作っちゃったら、ご褒美に豆大福いっぱい買ってってあげよっ」


-つづく-

コメント