【小説】Counter Attack 第一話:自転車に乗る女二人

Counter Attack
この記事は約3分で読めます。

 奥村由里子おくむらゆりこが利子の住む町に引っ越してきてから、もう1年が経っていた。

 働いてもいない、結婚もしていない、あばら家同然の酷い平屋に住み着いて、ご近所付き合いもしない。巷では謎の女性で有名だ。

 たまたま回覧板を届けるために由里子の家を訪問したことがきっかけで、利子は由里子の家に遊びに行くようになった。

 話をしてみれば普通の大人の女性。少々おしゃれには縁遠い格好をしているが、顔立ちは普通に綺麗だし、会話も普通で色々な話題にものってくれる。

 兄弟がいない一人っ子の利子にしてみると、年の離れた姉が出来たような感じで嬉しい。由里子もとくに利子を避けるでもなく、遠ざけるでもなく、遊びに来れば適当に相手をしていた。


利子
利子

「ところで由里姉
(ゆりねえ)
、さっきから時計と格闘して、なに作ってるん?」


 遊びに来た時から、今日はひたすら目覚まし時計をいじくっている。そのことに話題を向けると、由里子は眼鏡をクイッとかけ直し、得意げに口の端を歪めて笑んだ。


由里子
由里子

「ふっ、聞いて驚けよ。アタシはデロリアンを作っている!


 3拍ほどの間を空けて、利子はぽつりと反応した。


利子
利子

「へ? なにそれデロリンて」

由里子
由里子

「やだアンタ、デロリアン知らないの?」

利子
利子

「うん」


 あちゃー…という表情で、片手で顔を覆う。


由里子
由里子

「平成生まれのオコサマは『Back to the Future』なんて映画は知らないか…」

利子
利子

「あー、タイトル? それは聞いたことあるかも」


 由里子はヤレヤレといった表情で首を振ると、時計との格闘を再開した。


利子
利子

「そのデーロリンってのは、時計から作るものなんだ?」

由里子
由里子

「デロリアン! 作り方はシラナイよっ! でもタイムマシンだから時計いじってるだけだ」

利子
利子

「………タイム……マシン?」


 はあ!? という表情で、利子はふすまから離れた。

 利子はハイハイするように畳の上を這うと、由里子の前に座り直して額に手を当てる。


利子
利子

「もうすぐ冬だし、風邪でもひいたんじゃ…」

由里子
由里子

「病気じゃないし」

利子
利子

「学習机の引き出しの中に作らないとダメなんじゃない?」

由里子
由里子

「ドラえもんじゃないからっ!」


 由里子はムッと目を寄せ、真正面に座る利子を睨む。


由里子
由里子

「完成したらアンタをタイムトラベルに連れてってやるから、もう今日は帰りな!」


 ビシッと右手で玄関のドアを指す。

 不満そうに声を上げる利子を無視して、由里子は更にドアを指さした。

-つづく-

コメント